相模の国藤沢のむかし話

相模国藤沢地方には、たくさんのむかし話が伝えられています。昔は、たくさんいたであろう動物たちの話、虫たちの話もあります。すてきな人々の話は、懐かしい思いになります。

猿の生き胆のお話し

 

 

 

海の中にある、竜宮城に乙姫様がいらっしゃいました。

ある時、乙姫様が思い病気にかかてなかなか治らないことがありました。

 

海の中の魚はもちろん、亀も、えびも、くらげも、うにも、みんなで集まって看病しましたが、なかなかよくなりません。

どうしたらいいか、何か良い薬はないかとみんなで心配していますと、ものしりのだれかが、猿の生き胆が良くきくそうだと言いました。

 

良くきくと言っても、猿の生き胆など、そうやすやすと手に入るものではありません。

けれども、乙姫様の病気を良くするのには、どうしても手に入れなくてはなりません。

 

そこで、猿をどうやって竜宮までつれて来るかということが、相談されました

すると、知恵者の亀が。。

「私が行って連れて来ましょう」と言って

海岸まで出てきました。

 

でも、猿は山に住んでいますから、これからどうしたらよかろうかと思案にくれてしまいました。

 

空を見ると鳶がとんでいましたので、亀は、上手に話かけて、山へつれて行ってもらいました。

 

山に着いたら鳶は高い空から亀を地上落としました。

そのために亀の甲羅には、今のようなひび割れができたてしまいました。

 

亀は、痛さをこらえて木の上にいる猿に声を掛けました。

「猿さん、猿さん、お前さんは竜宮というところを見たくないかね」というと猿は、

「そりゃ見たいさね、だけど、どうやって海の中へ行くんだね」

「それなら猿さん、簡単なことですよ。私の背中にのって眼をつぶっていさえすれば、私が無事に連れて行ってあげますよ」

「そりゃいいは、では、ひとつ頼もうか」

と早くに話がつきました。

 

まんまと騙された猿は竜宮につれて行かれて、生き胆を取られてしまいましたが、乙姫様はとても良くなったというお話しです。

 

どうも昔話にでてくる、猿は、騙され役が多いようです。

この話、猿の生き胆を取る話は、多くあるようです。

なかには、せっかく猿を竜宮まで連れて行ったのに、竜宮の門番をしていた、くらげが猿に生き胆を取られると話してしまう話。くらげは、そのために骨を抜かれたそうです。

また、話してしまったのが、なまこで罰として口をさかれてしまったという話もあります。

『今昔物語』には、亀が妊娠した妻のために猿の生き胆をとりに行く話もあります。