相模の国藤沢のむかし話

相模国藤沢地方には、たくさんのむかし話が伝えられています。昔は、たくさんいたであろう動物たちの話、虫たちの話もあります。すてきな人々の話は、懐かしい思いになります。

狐に化かされた話

 

 

ある人が朝草刈りに、原っぱ4に行きますと顔見知りのおじいさんが、腰まで尻まくりして花盛りのそばの畑を

「おお深い、おお深い」

と言いながら夢中で歩いていたそうです。

それは、秋のはじめのことでした。

「おい、おい、お前さん、何をすてるんだい。どうしたんだい」

と声をかけたら、びっくりして、

「いやあ、とても助からねえ、深い。こう深くちゃしょうがない。流されちまう、流されちまう」

って、叫びながら歩きまくっていたそうです。白いそばの花が水に見えたのでしょう。。

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もうひとつお話し

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八百屋のおじさんも良く狐に化かされたそうですよ

おじさんのおふくろさんが、鵠沼に住んでたもので、よく、お祭りなんかに呼ばれて、おこわだとかの御馳走をもらって、夜になって帰ってきました。

頭の上に包みをのせて、素っ裸になって麦の畑の中を

「おお深い、おお深い」

と言いながら歩いていたんだそうです。

通る人が、それを見て、どうもおかしいからって畑へ入って行って、捕まえて背中を叩いたらやっと気がついて、

「何を深い、深いっていってるんだ」

と聞くと。

「だって川だもの」

っていったそうです。

お煮しめやなにかそういうものを狐がとろうとしたのか、頭の上にのせていたものが方々に散らかっていたそうです。

 

相模の国は、稲荷信仰があつく、屋敷神のほとんどがお稲荷さんでした。

この、稲荷のおつかいが狐であるというところから、どこの稲荷の祠にも狐の置物が一対祀ってあります。

 

 

 

猿の生き胆のお話し

 

 

 

海の中にある、竜宮城に乙姫様がいらっしゃいました。

ある時、乙姫様が思い病気にかかてなかなか治らないことがありました。

 

海の中の魚はもちろん、亀も、えびも、くらげも、うにも、みんなで集まって看病しましたが、なかなかよくなりません。

どうしたらいいか、何か良い薬はないかとみんなで心配していますと、ものしりのだれかが、猿の生き胆が良くきくそうだと言いました。

 

良くきくと言っても、猿の生き胆など、そうやすやすと手に入るものではありません。

けれども、乙姫様の病気を良くするのには、どうしても手に入れなくてはなりません。

 

そこで、猿をどうやって竜宮までつれて来るかということが、相談されました

すると、知恵者の亀が。。

「私が行って連れて来ましょう」と言って

海岸まで出てきました。

 

でも、猿は山に住んでいますから、これからどうしたらよかろうかと思案にくれてしまいました。

 

空を見ると鳶がとんでいましたので、亀は、上手に話かけて、山へつれて行ってもらいました。

 

山に着いたら鳶は高い空から亀を地上落としました。

そのために亀の甲羅には、今のようなひび割れができたてしまいました。

 

亀は、痛さをこらえて木の上にいる猿に声を掛けました。

「猿さん、猿さん、お前さんは竜宮というところを見たくないかね」というと猿は、

「そりゃ見たいさね、だけど、どうやって海の中へ行くんだね」

「それなら猿さん、簡単なことですよ。私の背中にのって眼をつぶっていさえすれば、私が無事に連れて行ってあげますよ」

「そりゃいいは、では、ひとつ頼もうか」

と早くに話がつきました。

 

まんまと騙された猿は竜宮につれて行かれて、生き胆を取られてしまいましたが、乙姫様はとても良くなったというお話しです。

 

どうも昔話にでてくる、猿は、騙され役が多いようです。

この話、猿の生き胆を取る話は、多くあるようです。

なかには、せっかく猿を竜宮まで連れて行ったのに、竜宮の門番をしていた、くらげが猿に生き胆を取られると話してしまう話。くらげは、そのために骨を抜かれたそうです。

また、話してしまったのが、なまこで罰として口をさかれてしまったという話もあります。

『今昔物語』には、亀が妊娠した妻のために猿の生き胆をとりに行く話もあります。

 

 

 

 

東京のかえると大阪のかえる

 

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東京のかえるが大阪見物に出かけました。

箱根の山まで来ると向こうから、やってくるかえると出会いました。

 

そのかえるは、大阪から東京見物に来たのだといいます。

 

二匹のかえるは、話しているうちに、

 

「この箱根の山はとても高い山だから、ここから背伸びをして見たら、東京が見えるかもしれないなぁ」と大阪のかえるが言いました。

 

「そうだ、そうだ」と東京のかえるも言いました。

 

二匹のかえるは、そこで後ろ足で立ち上がって背伸びをして、遠くを見渡しました。

 

しかし、かえるの眼は頭の頂についているので、立ち上がると、向かっている方向の反対側が見えるわけなので、お互いに自分の出て来たところが見えました。

「何だ、大阪は東京と同じじゃないか」

 

「東京だって大阪とそっくりだ」

 

「お互いに見物に行くことはいらないな、帰ろうよ」

 

ということで、二匹のかえるは、もと来た方へ帰って行ったそうです。

 

 

 

 

この話は、各地にあるようで、よく知られているのは、京都のかえると大阪のかえるの話です。

かえるに準えた、愚か者の話です、

立ち上がれば、後ろに視線が行くということに気付かないのに、自分たちの賢い考えと思い込んで振舞ってしまっていることへのおかしさを表しています。

 

 

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すずめとツバメの食べもの

 

 

 

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お釈迦様がお誕生になられたのは、四月八日です。

 

そのとき「天にも地にもわれひとり」と、上と下を指さしてお誕生になったというので、いまでも花祭りの日にお寺で甘茶をかけるのはこのお姿をしておられるからです。

 

お釈迦様は仏教のことなど、いろいろいいことをおひろめになって、いよいよご臨終のときには人はもちろん、あらゆる動物がかけつけて行ったということです。

 

このとき、すずめは、

「大変だ、お釈迦様、ご臨終とのことだ」

と働いていたまま、手ぬぐいをかぶったままとんで行ったそうです。

 

こうして、いろいろのものたちが集まって行ったようですが、

 

ヘビは、長い道中をにょろ、にょろ、にょろと行くので、後ろから行ったカエルが

「じれったいな、まったく、にょろにょろと、お釈迦様のご臨終だっていうときに」

と、ひょいとヘビの歩いている上を飛び越したらしいです。

するとヘビも、

「なにくそっ、飛び越したりして、ただおくものか」

といきなり飛び越そうとしたカエルの足を呑み込んじゃったらしいです。

それから、ヘビはカエルを足から吞むようになったということです。

 

ツバメは、おしゃれだったので、口紅をつけたり、お化粧をして出かけました。

それでお釈迦様は、

「お前はおしゃれで、こんな大切な時だということ忘れている。今後、お前には、虫しか食べさせられない」

と、おっしゃいました。

すずめは、鍋墨だらけの手をして、手拭もかぶったまま働いていたなりで行ったので、

「お前はお米を食べていい。一生お米を食べなさい」

と、お釈迦様はいいなさったそうです。

 

十二支の話にも同じような構想になっていました。

ツバメは、おしゃれなので除外されています。

すずめは、働きものなので、人間のそばにいて、食べ物には困らない生活をしています。

一方ツバメは、空を飛びまわって虫を捕まえなくては、ならないようです。

 

働きものとおしゃれ好きの対比ですね。(空を飛びまわって、虫を捕まえるのも働きもののような気がしますが。。。)

 

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大根と人参とごぼうのお話し

 

 

 

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あるとき、大根と人参とごぼうの三人が、仲良く旅にでました。

宿屋に着いて、ひと休みすると、いっしょにお風呂に入ろう、ということになりました。

大根はおしゃれです、お湯に入っても、ていねいによく洗ったので、まっ白になりました。

人参は、お酒を飲んで赤い顔をしていたので、あまり洗わなくてもいいって、ちいっと洗っただけで出てしまいました。

ごぼうは、お酒を飲みすぎて、お湯にはいらず洗いもしなかったので、よごれて真っ黒なままでした。

 

こんなわけで、いまでも、大根は肌がきれいで色も白く、人参は赤くなり、ごぼうは、あんなに黒いのだということです。

 

これは、相模国でのお話しです。

 

越後では

 

山遊びに行った、三人がくたびれ果てているときに、お百姓におぶわれて山を下りた大根は元のまま白く、残された人参は怒って真っ赤になり、ごぼうはあんまり怒ってひっくり返っていたので、日に焼けて真っ黒になった、というお話しがあります。

 

大根と人参とごぼうのお話しは、日本各地に伝えられているようです。

 

 

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これは十二支の話です

 

 

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おばあさんが、話してくれました。

 

二月の十五日は、お釈迦様の亡くなられた日でねって

 

お寺では、釈迦涅槃図って、この辺では、オヒョウゴというのを掛けたんです。

 

そのオヒョゴウには、お釈迦様の亡くなられたときのことが、絵になっていたそうです。

 

お釈迦様の臨終には、大勢の、ずいぶんと、たんとの鳥だの獣だのが集まってね、仲間になっていないのは、燕と猫だけでしたとよ。

燕という鳥は、お釈迦様が臨終だと聞いても、白粉つけたり紅つけたり、しゃれていたんでね、お釈迦様の死に目に会えなかったそうです。

それで、十二支のなかに入れなかったそうです。

 

燕は、のどのあたりがきれいだったり、くちばしがちょっと紅くなったりしてるでしょ、あれは、その時のお化粧のあとだそうです。

 

猫も、お釈迦様の臨終だと言っても、知らんぷりして、顔洗っておしゃれしていて

「お釈迦死んでも、こちゃかまわねえ」っていってて、脇を向いていたって。

猫だけは、お釈迦様が死んでも涙をこぼさなかったってね。

 

そんなふうだから、十二支の仲間に入れなかったのだそうです。

 

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十二支に由来する昔話は、日本中にあります。

その多くが、何故、猫が十二支に入っていないかの話です。

ネズミに騙されたとか、性格が意地悪だからとか、なかには、お釈迦様の薬を取りに行ったネズミを猫が食べてしまったから、とかさんざんです。

なにか、猫が可哀そうにもなります。

キツネが入らないわけの話もいろいろあるようですが、怠け者だからとの話が多いようです。

 

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犬のおしっこ

 

 

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あるときのことです。

犬が、足にけがをして、たいそう困っておりました。

 

たまたま、そばを通りかかった弘法大師さまが、それをごらんになり、あわれに思い、けがをなおして下さいました。

 

おかげで、犬の足は、もとのように、歩いたり走ったりできるようになりました。

それからというもの、犬は、弘法大師さまに治していただいた足をだいじにして、汚さないようにと、おしっこをするときは、その足をあげてするようになったのだということです。

 

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兎と猿と蛙の寄り合い餅

 

 

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昔、山の頂上で兎と猿と蛙が集まって、餅をついて食べようという相談がまとまりました。

 

そこでお米をといだり、火を焚いたりとめいめいが力を合わせて餅つきの仕事に精を出しましたので、臼の中にはまっ白なお餅がつきあがって暖かそうにほかほかと湯気を立てています。

兎と猿と蛙は、ここでただ食べてしまうのでは面白くないので、何とかもう少したのしく遊ぼうではないかと考えました。

 

臼に餅が入ったまま山の上から転がして、誰がちばん早く食べるか競争しようということになりました。

 

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気の早い兎は話がすむかすまないうちに、ぴょんぴょんと山を下って行って、下で手をついて臼の転がってくるのを待っていました。

そこへ上から臼がころがり落ちて来たのですからたまりません。

臼の下敷きになって兎の手は折れてしまいました。それでこの時から兎の前足は短かくなったということです。

 

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猿は、山を下りるのにお尻の下に木の枝をしいてするするとすべり下りて来たので、お尻はすれてまっ赤になりました。今でも「猿のけつはまっかっか」とはやされています。

 

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蛙は、兎や猿のように早く走れないのでのっそのっそと山を下りて来ました。

すると途中の木の根っこの所に、転がりおちた臼からこぼれた餅がごってりとひかかっているではありませんか。

「これは、これは、ありがたい」と、蛙は餅をさんざん食べました。それで今のようにおなかが大きくなちゃったということです。

(神奈川県)

 

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